2016年11月1日火曜日

[087.1] oct

10月のリスニングから
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Red Light Radio: Melody As Truth
アムステルダムのオンラインラジオRed Light Radioで10月8日に放送された、ロンドンのレーベルMelody As Truth特集。レーベルを主宰するJonny Nash(ジョニー・ナッシュ)と、現在アムステルダムを拠点に活動しているSuzanne Kraft(スザンヌ・クラフト)aka Diegoによる、これからリリースされるスプリット「Cristina & Carolina / Roberto & Giovanni」とアルバム「What You Get For Being Young」の収録曲と2人の未発表曲を含む2時間のプログラム。最高のアンビエント・セレクション。

Robert Lippok - Open Close Open (raum, 2016)
listen Close
Brian Enoも賛美するブルックリンのシンガーソングライター作品から、台湾の室内楽アンサンブル、サンパウロのピアニストによる自然との交感、そして北欧でつくられたヴィンテージ・レコードのコラージュへと、絶妙なリリースが続いているflau。昨年12インチ専門のサブレーベルとして立ち上げられたraumの最新タイトルは、ベルリン出身の電子音楽家Robert Lippok(ロバート・リッポック)の2001年作のリマスター再発。クリアスリーブとクリアヴァイナル、ラベルに印されたグリーンのドットは、Raster-NotonによるオリジナルCDの意匠が反映されている。設立時はエレクトロニカの系譜を継いでいたこのレーベルが刺激を受けていただろう00年代ミニマリズムのクラシックを、ポストクラシカル、ビートミュージック、南米音楽といった広範囲の現行シーンとよい距離感でリンクするキュレーター的存在へと飛躍したflauが、今このタイミングで取り上げたのが新鮮で、そこに新しい機運を感じた。

va Maizena Boys (No Hands, 2016)
11名のDJ兼プロデューサーからなるコレクティヴRoussakis(ロウサキス)やHelp Recordings、2 Bit Crewを中心とする、オーフスの地下ハウスシーンから生まれた新レーベルNo Hands。その第1弾タイトルとしてリリースされた、4名のクルーMaizena Boys(マイジーナ・ボーイズ)によるコンピレーション。DJ Sports(Milán Zaks) は兄のCentral(Natal Zaks)とHelp Recordingsを主宰するコア・プロデューサーの1人。Manmade Deejay(Mathias Okholm)はRoussakisのA&R。2 Bit Crewの片割れC.K(Christoffer Kejlstrup)は、ザックス兄弟と共にNo Handsの運営に関わっていて、サウンドクラウドのSafe Radioを担当している。Paltaはおそらくザックス兄Centralの別名儀。人物とレーベルの相関が複雑で判然としないが、SAFE Distributionの名の下で包括的に流通とブッキングを管理しているようだ。ノンビートのアトモスフェリックなトラック "Improvise In Order" や、Carl Stone "Wall Me Do" を思わせるレフトフィールド・トラック "Fingerdansen" が印象的で、自分にとってはbblisss」と同じように、クラブ・ミュージックの(古くて新しい)アンビエントな空気や動向を知った一枚。

DJ Sports - Phases Of Winds (Yield, 2016)
21か22の若さながら、既に複数のプロジェクトと変名を使って数多くの作品をプロデュースしているDJ Sports aka Milán Zaks(ミラン・ザックス)。アムステルダムに拠点を置くレーベルYieldから8月にリリースされた「Phases Of Winds」は、アンビエントなシンセパッドとジャングル、ダブの要素が入り交じるリスニング〜レフトフィールド志向のソロアルバム。Yieldは椅子の写真で統一されたカセットとデジタル、スウェットシャツで展開していて、本作ではDJ Sports本人が撮影した写真が使われている。

No-Man - Heaven Taste (Sähkö Recordings, 2016)
Alessandro Monti/unfolkが、7月にサウンドクラウドでRichard Barbieri & Tim Bowness(リチャード・バルビエリ&ティム・ボウネス)の "Brightest Blue" という美しい曲をリポストしていた。Montiが80年代に活動していたWind Pjt.を思うと、JapanやTalk Talkと連なるUKアートロック系譜のメランコリックなサウンドにシンパシーを感じていたとしても自然なことだと思った。それからTim Bownessのソロや、Steve Wilson(スティーヴ・ウィルソン)とのプロジェクトNo-Manのことを考えていた時に、目に留まったのがこの12インチシングル。元は1993年の「Painting Paradise EP」に21分のロングバージョンが収録された曲で、今回のリイシューでは、Steven Wilsonによる11分のエディットと、フィンランドのベテラン・プロデューサーJimi Tenor(ジミ・テナー)によるリミックスが収録されている。この曲がMixmaster Morrisのクラシックだということも初めて知ったが、それよりも実験的な音響テクノのレーベルとして認識していたSähköから、バレアリック〜アンビエント・ハウスの作品がリリースされたことが少し驚きだった。